ここでいう熱中症は、労作性熱中症(運動中)のものであり、非労作性熱中症(高齢者など家屋内でおこる)熱中症ではありません。

熱中症になっている場合と、予防では対処法は異なる

また、熱中症とよく似ている症状の脳梗塞(夏血栓)ではその対処法は異なるので、注意が必要である。ともに脱水症状が引き金になっているので、最初にどちらの症状なのかの判断が重要である。

脳梗塞(夏血栓)の症状
脳梗塞といえば、高齢者特有の病気と思われがちですが、運動中の脱水症状が引き金になる夏血栓は、年齢は関係ありません。
脳梗塞の兆しとして「『FAST』を覚えておくといい」と言います。FASTは顔、腕、言葉、時間を現す英単語のそれぞれの頭文字を取ったもの。顔の片側が下がってゆがむ、片方の腕に力が入らない、言葉のろれつが回らないといった症状が1つでも見られたら、一刻も早く救急車を呼ぶ。

FACE(顔)顔がゆがむ、片方が下がる

ARM(腕)片方の腕が上がらない、力が入らない

SPEECH(言語)ろれつが回らない、言葉が出ない

TIME(時間)一刻も早く救急車を呼ぶ

脳梗塞の前兆(一過性脳虚血性発作)数分で収まる場合でも、後で発症する可能性が大きい。

脳梗塞を熱中症と思い、症状が改善されるまで放置したり、濃度の高い経口補水液をのませて、血中濃度をさらに高めて悪化させたりすることないよう、脳梗塞と判断した場合は一刻も早く救急車を呼ぶことが重要である。

一方熱中症特有の症状としては、体温上昇、体温調節ができなくて、高温になり脈拍も上がる、呼吸が荒くなる。腕に力が入らないが片方ではなく、両方の腕に同じ症状が表れる。

熱中症を発症したと判断し、重度な症状(脱水症状や嘔吐・下痢)の場合は、経口補水液を飲ませるのが有効です。経口補水液は、スポーツドリンクよりナトリウム濃度が数倍高く、ナトリウムと水分を同時に補給できます。スポーツドリンクも有効ですが、重度の脱水症状でスポーツドリンクを大量に摂取すると、特に乳幼児は低ナトリウム血症に陥る危険があります。熱中症などで脱水症状に陥ったら、経口補水液を用いてください。

軽~中度の熱中症の場合は、経口補水液やスポーツドリンクだけでなく水だけでも有効です。

次に熱中症予防ですが、ここでも注意が必要です。

大量の汗をかいた後などに、水分を補おうと水を大量にガブ飲みすることで、血液中の塩分濃度が急激に下がり、引き起こされる。軽い疲労感から始まり、頭痛、嘔吐、ひどい場合は痙攣、昏睡を経て死に至ることもある。いわゆる「水中毒」です。先ほど出てきました「低ナトリウム血症」です。

しかも、水中毒と熱中症は、初期症状が似ているので、中毒症状が出ていても気づくのが遅れる可能性もある。水を飲むなら、あくまでも「こまめに」。熱中症対策を呼びかける場合には、「一度に大量に飲むことの危険性」も認識する必要があります。

お茶やコーヒーはカフェインの利尿作用が強いので、水分補給になりません。

次は「自発的脱水」と呼ばれる症状です。水分補給が水だけだと、「低ナトリウム血症」にならなくても、水を飲んで大量に汗を書いた時、血液中のナトリウム濃度が下がるのを防ぐために、発汗量に見合った分の水を飲めなくなるようにカラダが反応・調整してしまう現象。結果、水を飲む気持ちがなくなり、結果として熱中症につながってしまうことに。

予防には、水分と塩分両方が必要ということです。

次に予防にも、経口補水液やスポーツドリンクは有効かどうかです。水分と塩分両方補給できるはずですが、ここにも注意が必要です。

経口補水液は、健康状態を良くするものではなく、スポーツドリンクなどの飲料に比べて塩分が多く含まれている(1.5g程度/500ml)ことを念頭におくことが重要です。

脱水状態になりやすい状況や、軽~中度の脱水状態に陥った際には有効ですが、通常時に水代わりとしてガブガブ飲むドリンクではありません。

スポーツドリンクはどうでしょうか。

経口補水液に比べて濃度は低いですが、飲みやすくするため糖分が入っています。

飲みすぎると糖分過多になる危険性があります。あくまで大人用の飲み物として認識し、子どもが1日に必要な水分量すべてをスポーツドリンクで補うのは避けるべきです。

表示ラベルに『100mlあたり20kcal〜30kcal』と書かれていたら、500ml換算だと、角砂糖が5〜7個入っている計算になります。そう考えると、子どもはもちろん大人でも、熱中症対策とはいえ1日に何本も飲むのは控えたほうが良いですね。

さらに、糖分の摂りすぎは、子どもの糖尿病リスクを高める可能性もある。

スポーツドリンクや、糖分の含まれたペットボトル飲料を必要以上に飲みすぎると、『ペットボトル症候群』と呼ばれる急性糖尿病の状態になることがあります。主な症状は、たくさん水分を摂っているはずなのにのどが渇く、身体の疲れが取れにくくなるなど。

スポーツドリンク以外では、子どもの熱中症対策にどんな飲み物が適しているのでしょうか。

カフェインを含まない水や麦茶を、塩飴をなめながら摂るのが効果的です。最近では熱中症対策用の塩飴がドラッグストアなどで手軽に購入できます。常にカバンに入れて持ち運びしやすいのがいいですね。

さらに、水分や塩分の補給と同じくらい、大切にしてほしい熱中症対策がほかにもあります。

熱中症は、前日の睡眠不足や、朝食を食べずに過ごしているときなどによく起こります。

睡眠時間の確保と朝食を食べることは、実は熱中症予防には欠かせない対策の一つ。朝の食事、日中の水分・塩分補給、夜の睡眠と、1日を通して意識することが、より熱中症のリスクを減らせることになります。